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日本一のジャズシンガー 弘田三枝子さん [Vocal]

弘田三枝子さんが亡くなって1カ月が経った


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そしてサンソンの達郎さんとまりやさんとの夫婦放談で弘田三枝子さんを取り上げていた


洋楽が好きになり本格的に音楽好きになった中学生の頃から自分は歌謡曲のレコードを買うなんて事も無かったし、テレビラジオ等で意識して歌謡曲、邦楽を聴くような事はなかった、と言うよりも、むしろバカにしていた(ニューミュージックやシティポップと言われる邦楽を聴くようになるまで)

それで大学生になりジャズも聴くようになって行った頃に、ベースプレイヤーのリチャード・デイヴィスの77年のソロアルバム「Fancy Free」を買った時に弘田三枝子さんの名前を見付けて非常に興味を持った


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弘田三枝子さんの歌謡曲のヒット時代は勿論知っていて、自分は歌謡曲の人だと思っていたので、ラジオ等で弘田さんがジャズを歌っている事は何となく知っていた記憶もあるのだが(テレビ番組の「サウンドインS」等で弘田さんがジャズを歌っていたのは見ていた)、リチャードのアルバムで改めて弘田さんはジャズを歌っているんだ!と、気付かされた

弘田さんの歌はリチャードのアルバムでは本格的なスタンダードジャズって感じよりも、ミディアムなライトジャズって感じの歌唱で1曲しか歌っていなかった

それでも弘田さんはリチャードと繋がりがあるんだ!と思って、それからかなり後の83年に弘田さんのアルバム「Touch of Breeze」を買った


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このアルバムはジャズと言うよりも今で言うシティポップ系のサウンドで当時は売り出されたアルバムだった。

大野雄二さんがプロデュースとアレンジをし、昨年観た大野さんのコンサートのメンバーでもあった、ドラマーの市川康さん、ベースの長岡道夫さんや、岡沢章さん、高水”大仏”健司さん、日本のモダンジャズの重鎮のウッドベーシストの荒川康男さん、ギターは矢島賢さん、松原正樹さん、土方隆行さん、ボサノバ・アコースティックギターの名手で中牟礼貞則さん、キーボードは大野さんと大谷和夫さん等の錚々たるメンバーで録音されたアルバムである。


シティポップを意識したアルバムだったのでスタンダードジャズを歌うと言うアルバムではなかったのだが、殆どの曲を大野さんが作曲して捨て曲無しの全曲標準以上の出来の楽曲が入った良く出来たアルバムだった。


どんなジャンルでも歌いこなせる弘田さんの抜群の歌唱力はこのアルバムでも納得させられた


それから弘田さんのポップスを歌っているアルバムや「じゃずこれくしょん」のボックスセット等も購入して、弘田さんのジャズアルバムと言うものは殆ど揃えた


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その中でも日本人シンガーとして初めてニューポート・ジャズ・フェスティヴァルに出演の為に渡米した時の65年にNYで録音された「Miko in New York」


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ビリー・テイラーのピアノ、ベン・タッカーのベース、名手グラディ・テイトのドラムのトリオをバックに録音された


あのエラ・フィッツジェラルドに「弘田さんを是非!養子に欲しい!」と言わせたくらい、弘田さんの歌唱は本場のアメリカでも認められた。


このアルバムは弘田さんが18歳の時の録音されたアルバムだが、アルバム1曲目のベン・タッカー作曲、ボブ・ドロー作詞の「Right Here Right Now」で、弘田さんの素晴らしいスキャットが聴ける


日本人とは思えないスウィング感で、弘田さんのスキャットは日本で一番!と、自分は思っている


「Right Here Right Now」と同コンビのベンの作曲、ボブの作詞で、ハービー・マンやメル・トーメで有名になった「I'm Comin' Home Baby」でも、弘田さんのスキャットが聴け、ベンのアドリブで「さくら、さくら」のベースフレーズも聴ける


そんな中でもアルバムラストナンバーのベニーグッドマンとライオネル・ハンプトンが作曲した「Flying Home」の弘田さんのスキャットは秀悦だ 


トリオの演奏がメインとなった長尺の曲で弘田さんはスキャットしかしていないのだけど、充分聴き応えがある


弘田さんは進駐軍のキャンプで幼い時からポップスやジャズを歌っていたので、弘田さんが中学生の時にデビューした時から弘田さんはジャズも歌えたので、NYで録音した「Miko in New York」よりも前に日本でジャズナンバーを歌うアルバムも出していた


63年に出した弘田さんの記念すべき最初のジャズアルバムの「弘田三枝子スタンダードを唄う」では八城一夫トリオをバックに歌うガーシュイン作曲、バラード・マクドナルドとB.G.デシルヴァが作詞した「Somebody Loves Me」と、宮間利之ニューハードのビッグバンドをバックに歌うベニーグッドマンの超有名曲「Sing Sing Sing」が特に素晴らしく、16歳の日本人シンガーが歌が上手いだけじゃなく表現力があって本当にスウィングしてジャズを歌っている事は当時でも現代でも凄い事だったと思う


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同じ63年に出された日本の民謡をジャズアレンジで歌うアルバム「日本民謡を唄う」でも、前田憲男さんのアレンジ、宮間利之ニューハード・オーケストラをバックに「おてもやん」や「ソーラン節」等ではスウィング感だけでなく、弘田さんのパンチのある歌唱が当時ポップスのカバーのヒット曲だけでなくジャズでも聴ける


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これだけの表現力と歌唱は歌が上手いだけじゃ出来ない。やはり本場のアメリカ人の前で弘田さんが幼い頃から歌っていたから独特のパンチ力のある歌唱が出来たのだと思う


普通歌唱に於いてこんな大袈裟とも言える表現力は当時の日本人では恥ずかしさもあったりして中々出来なかったと思う


あと60年代のジャズアルバムでは66年に出た「Miko in Concert」


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原信夫とシャープス&フラッツとの共演のライヴアルバムで、これまた全曲スタンダードナンバーをビッグバンドをバックに弘田さんが歌っている。弘田さんの歌唱は弘田さんがポップシンガーじゃなく正にジャズシンガーであると言う事を証明している


全曲素晴らしいが、その中でも「Mack the Knife」「I've Got You Under My Skin」が凄く良く、特にトラディショナルナンバーの「When the Saints Go Marching In (聖者の行進)」がビッグバンドのアレンジの良さと相まって聴き応えがある。


70年代に入ってからの弘田さんのジャズアルバムでは、73年の「Jazz Time」の中の「I Want to Be Happy」高速スウィングで弘田さんが軽快に歌う


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弘田さんのアルバムでビッグバンドではなくコンボをバックに録音されるようになってからは鈴木宏昌さん(コルゲン鈴木)や大野雄二さんのアレンジでの録音が多くなっていくが、70年代に入り純粋なスタンダード系のジャズナンバーばかりじゃなく、次第にフュージョン系の演奏やアレンジの中で70年代ソウルナンバーも歌っている


そんな中でサンソンでも取り上げられていた76年のアルバム「My Funny Valentine」ではアレサの「Day Dreaming」もカバーしている


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コルゲンさんの弾くエレピ、市原さんのドラム、岡沢さんのベース、松木恒秀さんのギターと、当時のクロスオーバー系のサウンドアレンジでアレサよりもかなり洗練されたアレンジで弘田さんが歌っている
そして同じくコンボ編成でフュージョンサウンドのアレンジでスタンダードを歌っている77年の「In My Feeling」
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当時事件にもなった三角関係の当事者でもあるジャズギタリストの杉本喜代志さんが参加しているアルバムで、自分的にはスタンダードをフュージョンアレンジで歌ったものは余り好みではないのだが(曲にもよるけど)、アーヴィン・バーリン作の「They Say It's Wonderful」と、先に話した当時親密な仲になっていた杉本さんが作曲した曲に弘田さんが作詞したナンバーの「I'm Blind to All But You」が特に良い
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あとは78年の再度リチャード・デイヴィスと共演したNY録音の「Step Across (with Richard Davis)」
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リチャードのベースに、ビリー・コブハムのドラム、スタンリー・カウエルのピアノ、ジョー・ファレルのサックス、日野照正のトランペットの豪華メンバー


スタンダードナンバーをメインとした楽曲と数曲のオリジナル曲で構成されたアルバム


ガーシュイン兄弟作の「Our Love Is Here to Stay」、ロジャース&ハートの「Bewitched」が高速スウィングナンバーで、このアルバムの中では特に自分が惹かれる曲だ


弘田さんは音楽以外で話題になる事もあって残念な事もあったと思うが、弘田さんのシンガーとしての実力は稀に見る才能の持ち主のオンリーワンなシンガーとして特に音楽関係の人達やファンからは正当に評価されていたのは確かだったと思う

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